クロワッサンと外科医

コーヒーと一緒に。

舞台「シカク」を観ました

ふせったーでもいいんですけど、久しぶりに引っ張り出してきたブログにしたためようと思います。

 

1.前半について(ふせったーコピペ)『この世でまともな人間は一人もいないのでは』

男A 最初「障害とキズモノ両方もらったから別れるとか言ったんか、ひどいやつだ!」とか思ってたけど観てたらなんかちょっと違うかもとも思ってきた。別れようっていきなり言ったのは、目のことが嘘なんじゃないかと疑ってからなんだろうか?

男B 初っ端から「この指抜きグローブと服装がいろいろと怪しすぎるしエチュードだかなんだかの演技が嘘くさい!!!」と思ったらAからも「嘘くせえんだよ」と言われてて笑った。第一印象が「ヤンデレ激重(好きな人への解釈が)勘違い男」なのが本当に申し訳ない。「お疲れ様でした」って言われたなら帰りなさいよぉ!!!「名前で呼ばないで」って言われたらやめなさいよぉ!!!もう!!!!なんで色々ブチギレてるのよ!カルシウム足りてる!?情緒不安定か!!でもアイカに殺されたと言われててびっくりした。落ちた人助けるために入って死んだんじゃないんか。それとも、その通りだけど「結果的に見てアイカに殺された」っていう意味か?まだ分からん。やっぱり指抜きグローブの下なんかあるんやないかい!!!!!!!!

男C お友達の推し鵜飼さん。足が長い。今の段階で見えてる二面性がえぐい。さすが兄弟って言ってた場面もあったけど、お兄さん双子説ある?それは出来過ぎ?にしてもつかみどころなさすぎて怪しい。蓋開けたらこの人もエグそう。

女 今のところこの人が一番怖い

劇団員 フラットなところの奥底に隠れてる偏見とかめんどくささとかを全部オブラートぶっちぶちにひん剥いてそのまま生で出したみたいなセリフ全部言ってた。「目が見えなくて危ないんだから連れてくるな」は、見方変えればまあ確かにそう捉えられなくもないわなあ。てか見えてないだけであのBBQ会場は「川原の石いっぱいなところで川がすぐ近くにある」「だからアイカが落ちて、助けに入ったBも落ちて死んだ」だと思ってたけど、本当にそうなのか?物もないから私たちが勝手にそう思ってるだけなのか?「BBQって川原でやるもんでしょ」って思ってる私たちの思い込みがなす幻覚ですか?

結果
信じられない、もう何も(シンデレラの台詞)
後半見るの怖いよ!!!!!

 

2.後半から最後まで観た感想『思考を追いつかせるのに体力と糖分がいる』

 後半のメモは「この話にまともな人間いねえんか!!」という叫びが何回も書かれてた。残念ながら一人もいなかったよ。

 時系列にすると、川原で死ぬという衝撃の事実が終わってから少しして、指抜きグローブの話を突きつけるところから。そのグローブと不自然なくらいの厚着と黒い服装がもう“怪しさ”の象徴だったけど、そこは「やっぱりなあ」という。驚きはしたけど予想の範疇ではあった。

 お兄ちゃんも怪しいなとおもってたけどそれもまあ当たりではあった。双子説も当たってはいたけども。Bと絡めてそうなる~~~~!!???ってなった。

 クロロホルムが即効性ではないという話は結構もう有名だと思っているんだけど、どうなんだろう。その段階で「クロロホルムをなぜ気絶させるという用途で使おうとしたのか」「なぜ相手が目を覚まそうとした時に目を殴ったのか」「目を殴ったあとにどうしてまたクロロホルムが出てきたのか」というところを疑問に思った。

 一つ目については、結果からすると殺された双子のジンパチの記憶があったからなんだろうけど、脳死が自分の死のきっかけで、クロロホルムが手段だったからなのかと。若干おぼろげなので怪しいけども。二つ目に関しては、劇中でも言われていた「犯人が相手にとって身近な人物だったから」だけども、男Bにとっても、ジンパチにとっても女の中で「身近」なんだよな!!二重の意味で身近!!そうだね!!目を殴ったあとにまたクロロホルムはどうしてなんだろな。思いあたったような気もするけど忘れた。

 暗転になってた部分は、あえて視覚的に状況を見せないことで、観ている人の想像に任せるということだったんですね。私の好きな某ラーメンズとか最近はまった某東大頭脳集団もそんな手法でコントや動画や映像を作ってました。それを思い出した。

 特に冒頭の「別れ話を切り出す」のと「名前で呼び合うかどうか」のところ。状況が見えてなかったらただの「目の見えなくなってしまった女とそれに対する一人の男の挙動」でしかないんだけど、「視覚がある」からあの場に看護師がいて兄がのぞいていたこと、白い包帯をちょっとあげて女が周りを確認してたこと、名前を呼び合うかどうかの問答のところでAがいたことが分かる。目の情報って大きく状況理解に左右するんだな。ちなみにこの時点で「一番真っ暗闇なのは女」と思っていた。いや本当に。そのあととんでもなかったけどな!!

 女には「嘘をつくときには首が上がる、本音のときには下がる」という癖があると分かったあと、巻き戻していくつか確認した。配信はこういう時に便利。あと定点だったのがありがたい。「目が見えなくて絶望して・・・」「嘘ついてるって?」とか確かに上にクッと上がってた。「出てって」「聞きたくない」は下がってた。それに気付くと「うわ~~~~~」って天井向いちゃった。白い包帯はその首の動きが分かりやすくなる効果があるんだろうか。

 物語が進むにつれてAくんがどんどんかわいそうに見えていく。女が演劇とはいえ、他の男とキスしてるところを見せつけられ、その演技も自分の前といるときと同じように見えたから本気で恋慕を向けてるのかと嫉妬し、その後見方が変わったら「自分の前でも演技、嘘をついていた」ということに気付いてしまい、その後の顛末も見届けてしまうことになる。いろんなものを瞬時に背負い込みすぎでは。

 最初のシーンが視覚アリになったところ。服の話をしているときは、最初は「目の見えない彼女が記憶を頼りに話している健気な場面」だと思っていたけど、彼氏が背を向けた瞬間、つまり死角に女が位置したときに包帯をめくって確認するのを観て「エグ~~~~~!!!」って声出ちゃった。家だから許して。その場面は演技でも嘘でもなく、本心だと信じたかったよ。そこ。でもそこすら演技で嘘だったんだよな。そりゃあ2年過ごした彼氏からすれば絶望でしかない。めくって確かめてた時、そっと目を逸らす看護師。空気読んでる。でもあなたもグルなんですよね。そして「どんな病院なんだろ」「全部が暗闇」って言ってる女。顎が少し上がってる。う、嘘~~~!!!!

 後半で怒涛のように明かされていく女とC(兄)、そしてBとの関係性。「このままではただの三角関係」って話してるシーンから「ああ、兄も恋愛感情もってて一枚噛んでる感じねハイハイ」と思ってはいた。いたけど、このシカク関係って「AとBとCと女」と「Bと女と兄(ジンパチ)と兄(エイタ)」の2つがある。二つのシカクが重なってる感じ。二つあるとか誰が分かるんだよ…分からないからこそ後半が面白くなるんですけど!兄が妹に恋愛感情をもつまでは予想できたけど、父親も小児云々でクソ、双子の兄たちもそれはそれでクソ。そりゃ妹の本音はどこ?いつから自分を殺してた?とはなるな。妹も望んで兄に恋愛感情をもってたかもしれないけどね。

 過去の話を本人不在の病室で話してるその別で。女と劇団員村上が会う。なんで!!?!???!???なんで今君が出てkアッ君たちグルかい!!!!!!頭抱えた。あの川原BBQシーンを思い返し、あれがわざとで分かった上でかと思うと頭抱える。全てを分かっててBは助けに行くし、女がスイミング習ってたのも伏線だし。全部分かって、明かされたのに尚殺される(死にに行く)B。キツイ。オモイ。この兄弟妹全員救いがなくてしんどい。妹と兄が似てないのは血がつながってないからだし。

 2回出てきた、女とBが歩いてるシーン。その二人にとっては女とBでもあるし、妹に恋愛感情を向けてたかつての兄がやっとつかんだかもしれない幸福を噛みしめているシーンでもある。それを見ているもう一人の兄C。妹を見守るという意味では、犯人と一緒にいること、そして自分が殺したはずのもう一人の男の幻影と一緒にいることの二重の意味があるわけで。ひい、シンド。それを見るAの心情たるや。目に光なんかないだろうな。

 真っ白でまともな人間一人もいないなって思った。程度でいうならAがまだマシというかなんというか。マシであって看護師も医者(姿はなくても)も劇団員も含めて全員まともというか正義感オンリーで生きてる人はいなかったんだなあという。

 心理テストの群青色が最後の最後で回収されたのに唸ってしまった。ここでくるかあ!

3.全体を振り返って『シカクという概念と立方体』

 チラシやツイートにもたくさんあった「シカクについて考える」という旨の言葉。シカクを変換するといろんな意味になるわけです。劇中にもこれでもかというほど出てきて、聞いている観ている私たちの中には聞いた言葉がちゃんと漢字に変換されて、それが意味となって理解して腑に落ちる。じゃあそれぞれの人物にとっての「シカク」ってなんだったんだろうなと思うけど、Bが一番濃いシカクだったなと思う。最後の「俺に死角はない」で「もうこの人生において悔いるものはない」という意味。心臓の持ち主だった男からしても、ここまで隠せていた意味としても「死角にいた人物」であり、Cと妹にとっても「刺客」であった。「しきゃく」と呼んでいた者とは思えません(?)

 死角、刺客、資格、視覚、四角、視角、といろいろあります。ベッドも椅子も全て四角から構成されていて、箱になっている。Aが立方体を転がすように多面的に考えたから女の癖と嘘に気付いた。Bが多面的な男だったから今回の事件が起こった。劇場もハコというように四角の中。シカクに包含されている観客がシカクという多重異義語について考える。四角四面な考え方という言い回しもありますが、真面目な考えだけでは生きていけないし、真面目な考えと人生だけで生きてる人間は一人もいないんですね。この物語に枠というシカクに当てはまるようなお手本のような人間は一つもいなかったし、シカクにはまるような予想ができる展開と設定でもなかった。気が狂いそうなくらいシカクについて考える2時間でした。

 この内容を9公演も通せた役者さんたちがあまりにすごすぎる。心をかなりすり減らしそう…

 

 久しぶりにたくさん考える時間をもらいました。明日月曜日かあ。もう日付が変わったので今日ですが。基本は明るい物語、ハッピーエンドが好きなんですけど、たまにはこういうどっぷり水の中に浸かってゆらゆら不安になるのもいいなと思いました。

 心地よい疲れです。ありがとうございました!